作品概要


不況の嵐が吹き荒れる新宿。
エリザベス園子率いるクラブパラノイアも例外ではなかった。
大事な秘蔵っ子『亜子』を失った園子は、其の喪失感を埋めようと
他店より選りすぐりのホステスの協力を得て『エイズ撲滅リサイタル』を行う。
ところが、其の思いすらぶち壊すように新宿警察生活課が風営法強化のもと、
パラノイアに乱入。パラノイアを妬む者からの通報であった。

失意の園子を更なる困難が襲う。美帆、あずみといった生え抜きのホステス達の
離反、独立。繊細なホステス十詩子の心の病。経営不振による借金。
実の妹の結婚に伴う家族との確執。『兄として、長男として式に参加して欲しい』
何処にも逃げ場のない苦しみを、母の様に慕うカトリーヌへ吐露する園子。
『誰もが通る道よ』と園子を説くカトリーヌ。『神様は乗り越えられない苦難は
与えない』そんなカトリーヌの言葉に束の間の安らぎを感じつつも、
迫り来る現実に抗う術を失う園子だった。

そんな中、死んだ筈の亜子が園子の前を通り過ぎる。亜子を追う園子。
周囲の者は夢でも見ているのかと誰も相手にしない。
皆の苦しみや欲望を一身に受け、ぼろぼろになって行く園子。
いつしか、かつて愛した男『一樹』を思い出していた。
『お前が本当の女だったら…』そう言って新宿を去っていた一樹。
『何で今更、あいつの事なんか』
そんな園子に、亜子の幻影は問いかける。
『独りぼっちなの?』
真っ直ぐに張りつめ続けていた筈の心の糸が、複雑に絡み、こじれ、
自分ではどうにもならなくなっていた。

目が覚めると園子は車椅子に座っていた。
『目が覚めたの?』
年老いた妹、知子が優しい笑顔で語りかけた。
『今のは夢?』
園子は、年老いてる自分に気付く。
『そうね』
『私は独り…今は何も此の手に残っていない』
冨も栄光も其の手をすり抜け、老いさらばえた今の自分に気が付く園子。
『何言っているんだ?そろそろ皆来るぞ』
優しく傍らで囁く初老の男…一樹。
『まさか此れも夢?』
『何馬鹿な事言っているの』
笑顔で答える知子。
そうこう言っている間に次々と集まるかつてのキャスト達。
『みんな?』
『オーナー、パラノイア三十五周年、御目出度うございます!』
『みんな…』
多くの血のつながらぬ家族に囲まれ…フィナーレへ