「レッスン編」

 私の仕事場、ゲイバー「白い部屋」はPM830分からオープンし1030分と130分の
2回ショータイムを行っており、2ヶ月毎にリニューアルしています。
毎回曲選びから始まり、衣装を発注し、個々のキャラクターを考えた上で約
40分のショーを構成します。
作り手のオーナーをはじめ、振り付けの先生、選曲編集担当の先生たちで何度も打ち合わせを重ね、
その度に頭を悩ますそうです。

 自由気ままに適しているような私たちでも、レッスン期間中は、意外や意外、真面目に取り組みます。
なぜならショータイムで頂くチップは生活するために欠かすことの出来ない副収入なので
手を抜くことは出来ないのです。
ましてお店に来て頂いているお客様は私たちの楽しいおしゃべり以上にショーを期待されているようで、
それを裏切る事は許されるはずもありません。
振り付けの先生も真剣そのもので、レッスン中、タバコを吸って休憩などしているものなら、
「そんな暇あったら裏で練習して来い!」と昔なら灰皿が飛んで来たこともありました。
たまにお互いの思惑が食い違い、意見がぶつかり合ったりもします。
以前は踊るポジションの事でよく衝突しました。
その時は、先生の言葉があまりにも厳しく聞こえ、悔しく思えて泣き明かした日もありました。
私が豊胸手術をする前は、トップレスショーにはもちろん参加する事は出来ないし、
お姉さん達と踊る時も、隅のほうで装飾されたブラジャーを着け踊っていました。
その時は私にとって、とても耐えられない苦痛だったのです。

 手術を決意した一番の理由は、男のためでも、自分が女に為りたいわけでもなく、
この苦痛から解放されたいが為、ショーのためだけに思い切って手術を行いました。
やっぱりお客様はオッパイを出して踊っているとオッパイのほうに目が行く人がほとんどで、
もちろんショーにも迫力が出るものです。
とても色気のない話ではありますが、一流の大工さんが一流のカンナやノコギリを所有しているように、
私にとってのオッパイは大工さんのそれと同じで、私が私らしくショーを踊るための必要な商売道具にすぎないのです。親兄弟を捨て、大の男がもちろん男を好きでありながらも化粧をし、
まして胸を入れ、顔を整形し、より女っぽく存在する以上、私はいい衣装をまとい、
いいポジションで踊りたいと願って生活をしてきました。
要は単純に人よりも目立ちたかっただけなのかもしれません。
しかしどこの世界も同じだと思うのですが、私一人が存在している訳でもなく、
いろいろな人が、いろいろな姿かたちで共存しているという当たり前の事をズーっと気づかずに生きてきたのです。
ショー一つを取り上げたにしてもいろんなキャラクターが入り交じり
楽しくて華やかなパッケージショーが出来るわけで、私一人では何も出来ないんですよね・・・。
自己主張が強いのは曲者で、時にわがままだけが目立ち、協調性のなさを自分で気づくまで、
たくさんの人たちを傷つけてしまったと、いまさらながらに反省しています。
そんな私も今ではどんな曲がまわってきても、どんなキャラクターに扮さなければならなくても
、仕事だという意識のもと、何も気にならなくなりました。だって自分自身が綺麗に輝いていたら、
どこのポジションで踊っていても、どんな衣装を着ていても、
ちゃんと見ていてくださるお客様は絶対いらっしゃるからです。

 しかしレッスン中は時間帯的にもとても厳しく、昼間の12時に起き、
2時から5時までレッスンをこなした後、同伴出勤のときなどは、
7時くらいまでに美容院でセットを終え、お客様との待ち合わせし、
食事や他の店に行き、夜
10時に入店、2回のショーを踊り、朝4時まで仕事。
その後アフターがあるときは飲みにいったりして、眠りにつくのは大体朝の
6時過ぎになってしまいます。
もう恋の一つもする暇も余裕もなく一日が過ぎていくのです。
自由気ままに毎日を笑って生活しているように思われがちな私たちですが、ちゃんと努力しているんですよ・・・。
残業が多いとか、有給が取れないとか愚痴ばっかり言っている世間の方々!
そんなに楽をして稼げる仕事なんてないわよ!と声を大にして言いたいです。
まぁそんなことを偉そうに言う柄でもないんですが。
今日も年末年始豪華バージョンのレッスンで、
体が疲れているのでそろそろ眠らせていただきます。おやすみなさい・・・。



*このエッセイは1998年よりヤンナイに掲載されたものです

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