「いい湯だな…編」

前回のテーマは「ストレス」について書きましたが、そのストレスの解消法の一つとして
温泉があります。
おかま何人かで行く大騒ぎ温泉ツアー、彼と二人だけで行くお忍びの旅、
お客様の宴会や温泉ホテルのディナーショーなどで踊る営業編と
いろいろなパターンで温泉の旅を楽しみます。

やっぱり温泉のいい所は、上げ膳、据え膳で、料理や飲み物が運ばれてくる事。
サービスする方から、される方に立場が変わる喜び、そしてなんといっても、
広いお風呂でゆっくりと日頃の疲れを癒すひと時、風呂上りのマッサージ、
どれをとっても言うこと無し!

普段抱えている悩みやストレスなんいっぺんに忘れてしまうくらいです。
しかし、夜に生きる私たちニューハーフが昼間から世間に出るとなると
なにかしらのアクシデントはつきまとうものです。
その温泉であった数々のエピソードの中から、今回は一つだけ書くことにします。
あれは、三年前の夏、熱海の花火大会でのことです。
お客様4名ニューハーフ4名、計8名で旅行に行きました。
新幹線の中からトランプで賭けを始めたり、ビールを飲んで酔っ払うおかまちゃんもいたりと、
他の迷惑などかえりみずの大騒ぎでした。
日曜日の朝4時まで仕事をして、その日の昼1時に待ち合わせでほとんど寝ていないのにもかかわらず
温泉の時は何故か元気!
旅館に着いてもその元気は持続していて、時にパワーアップしたりもするのです。
私は、お客様の中の一人にタイプの人がいたので少し浮かれ気味でした。
その人は元体育会系といった体のガッチリした男らしい人で、
彼の体を生でちゃんと見る事、あわゆくばその夜…というのが
私の旅の目的だったのです。

前回も書いたように上半身はお母さん似、下半身はお父さん似の私は、
おっぱいを隠して男風呂、オチ○チ○を隠して女風呂に入ることも
自由自在に選択できるのです。
けど、やっぱり、三度の飯よりオチ○チ○が好きな私は、たくさんの男が
入っている男風呂に入るのが楽しみなんです!
私はチェックインを済ませ、お茶を一杯いただくとすぐ、
お目当ての彼を誘いお風呂に入ることにしました。
彼は最初他の人の手前なのか、本当にイヤだったのか?なかなか私の誘いに
乗ってくれません。
そこで「男同士でしょう、何恥ずかしがってんのよ!」と、
こんな時だけの都合の良いセリフでどうにかこうにか、連れ出しに
成功しました。
時間帯がよかったせいか、誰も入浴してなく二人だけの、大きい家族風呂状態でした。
私は彼のナマの裸を見る喜びで、もうハラハラドキドキ、元気モリモリ!
私の事見て見ぬふりしながら体を洗う彼に近づき、酒焼けした性別のない
セクシーな美声で「背中流してア・ゲ・ル」と彼の耳元でささやきました。
頼まれてもないのに「いいよ、よせよ」という彼に大接近。
彼のそんな言葉など完全に無視して、過剰サービスは始まるのでした。
彼も、普通の成人男性がゆえになまめかしいもう一つの彼自身も反応し始め
私の唯一の男性自身も彼以上に反応し、隠すに隠せないほどの状態のまま
Dカップのオッパイに、ボディソープを塗りまくり、彼の背中をパイズリしたりと
エキサイティングしている時です。
五、六十のおじさんたちが4〜5人入ってきたのです。
一瞬この私もまともな人間に戻り、公共の面前でなんてはしたない事をしてたのでしょう
と反省したものの「旅の恥はかき捨て」といった都合の良い言葉で片付けることにしました。
おじさん達をシカトして、彼と二人で湯船につかってから
5〜6分経った時です。突然ネクタイをした従業員らしい方が扉の方から
「すみません、女性のお客様はお上がり願えるでしょうか?」と、とても
丁寧に私に言ってきたのです。何を思ったか自分でも判らないまま、
「私、男で〜す!」と、隠しておいたイチモツを湯船から立ち上がり見せて
しまったのです。その従業員も、何が起こったのか理解する間もなく
「申し訳ございませんでした。ごゆっくりどうぞ」と、扉を勢い良く閉め
帰って行きました。
どうやらさっきはいってきたおじさんの一人が脱衣所からフロントにTELしたみたいでした。
部屋に戻り、彼はさっきの事件を他のメンバーに話し出してもう大爆笑でした。
怪我の功名というか、昼間の失礼のお詫びとして、ホテル側から夜の食事と飲み物を
サービスしてくれたのです。

みんな准のチンチンにカンパイと感謝されたのはいいものの、釈然としないまま
酔っぱらってました。
その日の花火は、私の美しさに負けず劣らずキレイで華やかに咲き乱れていました…。



*このエッセイは1998年よりヤンナイに掲載されたものです


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