ゲイのオジン

 二日酔いというのは、年を取れば取るほど、つらくなるような気がするのは、
私だけでしょうか?体がだるいとか、胸やけがするといった症状はもちろん、
立ちくらみすらするほど、昨日は飲んでしまいました。
どうやら、飲み過ぎて、酔っぱらってくると、自分でありながら、
自分じゃないようなもう丁人の自分が誕生し、
その日の体調や気分によって、多重人格者のようにいろいろな私の一面が登場するのです。
例えば、説教モードに入り、後輩やお客様にでも
偉そうに菰蓄(うんちく)を述べたりするときもあり、花が散るのさえ涙するような、
まるで可憐な乙女のようにロマンチックになったり、泣き上戸になったり、
ただの酒乱と人から言われるほど、喧嘩っ早くなったりと、タチの悪い私でした。
たくさんの失態を今までに晒してきたせいか、
1軒のお店のママになった私は人格が変わるほど酔っぱらうことはないまでも、
昨日は本当に飲んでしまいました。酔っぱらう時に理由はないと思うのですが、
火が付くと消えにくいタイプのようで、お店を午前三時に終え、
5件もはしごをし、気が付けばお昼の十一時まで飲んでました。
5件とも、もちろん働いている従業員も違えば、お店の造りや雰囲気、
飲んでる客層も異なり、どのお店も楽しく飲めました。
それにしても、新宿二丁目という街は恐ろしいところで、
昼の十二時までやってるお店とか夕方までやってるお店があり、
この街の質の濃さを物語っているかのようです。
 
 二丁目に行ったお店の従業員は、北海道から出てきたばかりの二十二歳の好青年で、
俳優を目指しているらしく、余計なお世話が大好きな私は、
ほぼ強引に人生勉強だとその子を連れて次のお店に行きました。
まあ俳優を目指してるだけあって見てくれは悪くないのですが、
お話をすると、若いせいもあるのでしょうが、とても内容がなく、
つまらないと言ったら彼に悪いのですが、本当につまら
ない子でした。芸能人を目指して頑張っている子はたくさんいるわけで、
うちの店にも来るのですが、人ごとながら夢をつぶすようで悪いのですが、
”無理よ”という子がたくさんいるのです。
容姿の善し悪しなんかはどうでもいいのですが、華がなく魅力がなし
ただ安易に有名になりたいと思っている田舎者が多すぎます。
少なからず、テレビや映画、雑誌の仕事、
ディナーショーなんかやらさせてもらってるような
アマチュア芸能人のような私達ですから、
芸能界の厳しさは、何となく知ってるつもりでいます。
その子と話をすればするほどバカバカしくなり、ただ若い男の子が好きな
”ゲイのおじん”のように、その子の体を触って気を紛らわせるしかありませんでした。
これ以上一緒にいると以前の私のように、またもう一人の自分が登場し、
説教教祖のように何か述べまくりそうな気がし、その子は帰し、
また次のお店に行きました。
その後は、うちの店の従業員を電話で呼び出し飲んだのですが、
私たちもそう思われているのでしょうが、本当にいろんな人が生きていると
つくづく思います。

 酒場に集う人たちがいないと私たちの商売は成り立たないのですが、
お酒というのは楽しくもあり、恐ろしくもあり、不思議な液体のようです。
また今日もいろいろな人間模様を見ながら、
人の本当の部分を見つけていければ、と思っています。

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