Essey


 ご指名ありがとうございます。呑奈准(どんなじゅん)です。
誰が指名したんだっちゅうの?って感じで始まりました。

 私の連載「美から出た錆」いわゆるニューハーフ、ミスターレディーと
世間で言われるようになって早十年の私のエピソード、最近想っている事を、
これから先、綴って行こうと思っています。
 美しさがゆえに出してきた、たくさんの錆の数々をうまく表現できたらなぁと思っています。

まずは一回目、呑奈准ってどんなヤツ?という人のために、簡単なプロフィールから始めようと思います。
 よく初めてお店にいらっしゃるお客様に「いつから男が好きなの?」とか「本当に男が好きなの?」といった質問を受けます。
これは信じられない人もいらっしゃるでしょうが、生まれたときから、いや物心ついたときには、もう男が好きでした。
 小さい頃は、いつも女の子とばかり、おままごとや、ぬり絵、着せ替え人形などして遊んでいました。
一番最初に欲しがったものは、お姉ちゃんとお揃いの赤い靴でした。その頃の私は、今考えてみると、
男か女かとかの性別など何にも考えず、ただ無意識のうちに、行動していたと思います。
その行動のどれひとつを取っても女だったのかもしれません。
 思春期に入って、自分は、男として生まれてきたのにもかかわらず、男が好きなことに悩み、苦しみました。
今でこそ、こんなに開けっぴろげに生きています。 が、あの頃は、本当に頭がおかしいんじゃないかとか?
小さい頃、発熱した日が3日続いたあのときからこうなったんじゃないかとか、真剣に悩んだ日もありました。
 高校の頃、友達の部屋に3・4人で集まり、AVビデオを見てるとき、友達は、AV女優のあえぎ声やしぐさに興奮してるのに、
私はもちろん男優しか目に入らないし、興奮している友達を見て、興奮する次第でした。

そして学生時代。芸大を目指し上京して、新宿2丁目に出入りするようになり、私の人生は少しづつ変わり始めました。
まず男として男を好きな自分を隠さなくてもいいこと。いろいろと干渉する親や身内、地域住民の方々と触れずに
生活することの喜びを感じ始めたからです。
十八年間隠し通したストレスやフラストレーションから、私は、毎夜、毎夜、新宿2丁目に足を運び、同じ仲間と
まるで傷を舐めあう猫のように。じゃれあい、慰めあうような生活をしてきたように思っています。
そんな生活は私にとって、とても心地よく、いつの間にか学校にも行かなくなってしまいました。
その頃の私は、いわゆるホモセクシャルといって、男の格好のまま男が好きで、女装するきなんか、全然ありませんでした。
 
いつか書くかもしれませんが、そのホモ野郎だった私がある日突然、ノーマルな男を好きになってしまったんです。
どうしても、その人に振り向いて欲しいと思うようになり、短かった髪を少しづつ伸ばし、薄化粧を始め、
ユニセックスなファッションで着飾るようになってしまったのです。
もう気がついたらキャンバスに色を付けていく作業よりも、自分の顔にアイシャドーや口紅を付けるほうが楽しくなってしまいました。
その彼は、私が女に近づけば近づくほど、私の事を振り向いてくれるようになりました。
おそらくこの恋が、私が始めて、男という戸籍を持つ女の恋愛の始まりだったと思います。
こうして、この恋が、私がホモから女装、そしてニューハーフになったのだろうと思います。

 もちろん、その過程にはいろいろとありましたが次回から少しづつ書いていこうと思ってます。
 たとえば、親兄弟へのカミングアウトの話。その後の恋愛。数々の男の人の話。
テレビや雑誌に出まくっていた頃の話。そして水商売という今。
私の収入源になっているお店の話などなど、楽しみにしていてください。

 さて、話は元に戻って、生まれつきというか、正確にいうと物心ついた頃から男が好きなので、
お客様の「本当に男が好きなの?」という質問は、いわゆる世間でノーマルと言われている男性に、
「本当に女が好きなの?」「いつから女が好きなの?」という質問をしていることと変わらないないのです。
これほどの愚問はないと思うのですが、私にも、知らない世界がたくさんあり、
知らず知らずのうちに素朴な質問をしているときがあるのだから、仕方ないと思っています。
たまに、初めてのお客様ばかりで、このような質問攻めにあうときは、テープレコーダーに吹き込んで流してやろうかと思うときもあるのですが、
これも、この道を選んだ私の身から出た錆だと思い、毎日を過ごしていこうかと思っています。


*このエッセイは1998年よりヤンナイに掲載されたものです


-Back-